幸せのカルテでは、過去にメールや質問箱でいただいたご相談事例をご紹介していきます(個人を特定できないよう、一部を改変して紹介いたします)。
今回は、38歳・女性、H.Kさんからいただいたご相談「私は幸せになれない運命なのではないか」です。
自分は、幸せになれない運命にあるのではないか。
こんにちは。私は現在38歳で、保育士として働いています。仕事は嫌いではありませんが、将来のことを考えると暗い気持ちになってしまいます。私は地元の大学を出たあと、しばらくしてから保育士になりました。長引く就職活動で鬱のような状態になってしまい、結局卒業まで就職先を決めることができませんでした。
気力を失いかけていたときに、母が勧めてくれたのが保育士の勉強でした。ニートのような状態だったので、両親への「アリバイ」のようなつもりで勉強を始めたところ、4ヶ月で資格を取得することができました。その間に母は、自分のツテで働き先を見つけてくれ、私は流れでそのまま保育士として働くことになりました。
毎日子供と触れ合うのは楽しく、子供たちが初めて私の名前を呼んでくれたときなどは喜びを感じることもあります。しかし、その感情は長く続きません。彼ら・彼女らは私の子供ではなく、夕方になれば、お父さんやお母さんが連れて帰っていく子供たちです。20代の頃はそれについて特段違和感を覚えることはありませんでしたが、年齢を重ねるにつれて、辛い事実へと変わっていきました。
恥ずかしながら、私は生まれてこれまで1度も恋人ができたことがなく、これからもできるイメージはまったく湧きません。そのため、ときどきは、朝楽しみに出勤することはあっても、夕方になれば、決まって、虚しく、惨めな、嫉妬のような、諦めのような、暗い気持ちになってしまいます。
職場には男性との出会いはなく、ときどき話せるのは子供たちのパパで、それも1日のできごとを伝達するのみです。もはや男性とどのように楽しい会話をすればよいかも分からず、もう一生恋人はできないのだろうなと感じていますし、結婚や子供など望むべくもありません。
最初にお伝えしたように、仕事は嫌いではありませんが、十分なお給料をいただいているとは感じられません。たくさんの子供の命・生活を預かっていることに対して、報酬は安すぎると感じています。そもそも、この6〜7年は昇給もない状態が続いています。今さら別の職業に転職することも難しいと思います。
そんなことを考えると、これからの人生に希望が持てません。もう、自分は幸せになれない運命にあるのではないか、とすら感じています。このような悩みを打ち明けられる親友もいません(正確には「いました」が、彼女もずっと前に結婚して子供がおり、私の悩みを理解してもらえる気がせず、最近は疎遠になっています)。
でも、こうして相談しようとしている、ということは「それでも幸せになりたい」と感じているのだなと思ったり、「まだ諦めてないのかよ」と冷ややかになってしまう自分もいます。本音をいえば、幸せになりたいです。なりたいけれど、なれる気がしないのです。でも、こんな私でもまだ光があるのなら、それにすがってみたい気持ちもあります。おこがましいと感じながらも相談させていただきました。長文となってしまい、失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
途切れた道には、別の道が現れる
こんにちは。お話を聞かせていただき、ありがとうございます。あなたが抱えている思いや感情を伺い、とても考えされられました。まずは、こうして話をしてくれたこと、自己開示をしていただいたその勇気に感謝したいと思います。
今回のお話は、あなたが歩んできた人生の隣で並走するような気持ちで読ませていただきました。あなたが感じている不安や悩みは私にもよく理解できます。
あなたが今感じている孤独や不安、未来に対する絶望感は、とても重くて辛いものだと思います。就職活動で体調を崩されたことは、あなたにとってとてもきつい経験だったろうと想像します。もしかしたら、内定を獲得している友人たちを見て、置いていかれているような気持ちにもなったことでしょう。
そんな中にでも、あなたには光があったように私には思えます。それは、お母さまの存在です。人生には挫折がつきものです。挫折のない人生などありません。大切なのは、そこでどう自分と向き合うかです。
挫折を味わうと、人生の「道」が途切れたように感じるものです。しかし、実際にはそうではありません。「道」は続くのです。ただ、少し進む方向が変わるだけなのです。言い換えると、別の道が現れる、ということです。
「仕事=人生」になっていないか
お母さまの助言によって、あなたには新しい道が現れました。それが保育士への道です。実際にあなたはそれを実現させ、10年以上にもわたってその仕事を継続されています。これは本当にすごいことなのです。そのことを、まずあなたに伝えたいと思います。
ただ、仕事の難しさの1つに、「仕事と人生が同義になってしまう」ことがあります。生きていることの大半が仕事に支配され、生きることと仕事の境界線が曖昧になってしまう、つまり仕事が人生になってしまうことがあるのです。
仕事の喜びが人生の喜びになってしまうと、「辛い」の割合が大きくなってしまうことがあります。保育士の仕事では、子供とのふれあいに喜びがある一方で、大変なこともたくさんあったことでしょう。親御さんたちに対してコンプレックスを感じたりすることもその1つです。仕事の嫌な感情が人生に紐づいてしまっているのかもしれません。
あなたには、あなたの人生を生きる権利がある
1つだけ、あなたに知っておいてほしいことがあります。それは、「あなたには、あなたの人生を生きる権利がある」ということです。
自分よりも若くして子供を持つ人を見て、劣等感を抱いてしまう気持ち、また、あなたが感じている孤独感や未来への不安は、私自身もよく理解できます。もし辛くなったら、これを思い出してください。人にはそれぞれにバイオリズムがあり、その人たちは、その人たちなりのリズムで人生を歩んでいるに過ぎないのです。
幸せの価値観も人ぞれぞれです。あなたにとって、「結婚」や「出産」は本当の幸福なことだと感じますか?もしかして、それは周りが決めた、あるいは長い時間をかけて刷り込まれてきた幸せの価値観である可能性はありませんか?誰かが決めたものへ向かうこと、それができないとして、それは「運命」ではなく、あなたの「選択」である可能性もあるのです。
あなたには、あなたの人生を生きる権利があり、あなただけのバイオリズムがあり、そして、目の前には、あなただけの「道」が続いていることを忘れてはいけません。
あなたには、動き出す勇気がある。
それでも、やはり結婚が幸せだと感じるなら、ときには動き出す勇気も必要です。ご存知のように、タイムマシンはありませんから、人生において一番若い日は「今日」です。明日になれば、また1日、人生の針が進むことになります。
動き出すベストなタイミングは今日、次によいタイミングが明日です。何か地域のコミュニティや習い事に参加して、他人との接点を増やしたり、今ではマッチングアプリという手段も悪くないと感じます。
このご相談を私に送ってくれたあなたには動き出せる勇気があります。そんなあなたに相談をいただいたこと、私は心から誇りに思いますし、きっと次の一歩も踏み出せると確信しています。
「幸せになりたい」という、その気持ちが大事。
未来のことを考えて暗くなってしまうのは、不安があるからです。不安のもとになっているのは「このままだと…」ということが前提になりやすいものです。反対に言えば、何かを変えれば別の「道」が開けるかもしれないということなのです。
実際に、大学卒業後のあなたがそうしてきたように、何かのきっかけで人生が変わったりするものなのです。もし今が良くないのだとしたら、変えることで良くなる可能性が高いと言えます。必ずしも、いきなり大きなことをする必要はありません。
出勤するときの道を変える、とか、朝の挨拶を大きな声でしてみる、とかそのようなことでも変化は起こるものです。よくないことは「諦めること」です。諦めてしまうと、考えることをやめてしまいます。変化することができなくなってしまいます。
しかし、あなたは言いました。「幸せになりたい」「諦めていない」と。それは、まだ変われるということなのです。その最初の小さな一歩がご相談のメールだったと私には思えます。
一人ひとりが自分なりのペースで前に進んでいます。あなたもどうか焦らずに、少しずつでも自分なりのリズムで今日を、明日を歩んでみてください。
最後に
私の仕事は相談者の方の心に寄り添うことであり、基本的に相談者の方を否定することはいたしませんが、今回は1つ否定させていただきたいと思います。どうかご容赦ください。
私は、あなたが幸せになれない運命にあるとは思いません。あなたは幸せになれます。幸せになる権利があります。それだけは確かです。あなたの人生における幸せの価値感は、あなたが決めていいのです。そのことを、どうか忘れないでください。
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