今回取り上げる幸せの名言は、アニメ『クレヨンしんちゃん』、野原しんのすけの父・野原ひろしの名言「幸せでいたいなら……」です。これには続く言葉があります。その深い意味とは。詳しく探っていきましょう。
『クレヨンしんちゃん』野原ひろしの人物像
野原ひろしは、漫画・アニメ『クレヨンしんちゃん』の主人公・野原しんのすけの父で、年齢は35歳、霞ヶ関にある「双葉商事」で係長として勤務するサラリーマンです。劇中では「安月給」と妻であり、しんのすけの母である野原みさえに痛烈なディスを受けるひろしですが、商社勤務で年収は約600万円とされており、年齢に対する給与水準としては決して低くなく、「むしろハイスペック男性である」としてSNS等でもよく話題に上がります。
そんな野原ひろし氏は、劇中で頼りない父のように描かれることもある一方で、家族愛に溢れる、非常に人情味のある人物としても描かれます。35歳にして、すでに自分の生き方の答えを持ち合わせているかのような、含蓄のある名言も数多く残していることでも知られています。
今回取り上げるのは、その中の1つで、「幸せ」「幸福」について、深く考えさせてくれる名言です。
野原ひろし「幸せでいたいなら……」
言葉の全文は以下です。
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一日だけ幸せでいたいならば、床屋に行け。
一週間だけ幸せでいたいなら、車を買え。
一ヶ月だけ幸せでいたいなら、結婚をしろ。
一年だけ幸せでいたいなら、家を買え。
一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。
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実はこの言葉、野原ひろしの発言とする出典は不明で、元ネタは西洋のことわざだとする説があります。ですが、言葉というものは特定の個人が言うことで説得力が増すということが頻繁に起こるものです。実際に野原ひろしが言ったかどうか、その真偽を確かめるのは事情通の方にお譲りして、ここでは同氏が語ったものと想像してお話を続けたいと思います。
「幸せ」は永遠には続かない、ということ。
この言葉ーー特に前半は、幸福に関する1つの心理を突きつけてきます。それは、「幸せ」は永遠には続かないということです。
髪を切れば1日幸せになれる
床屋(美容院)に行けば、新しい髪型になって、場合によっては生まれ変わったような気持ちになり、うきうきした気分になった経験のある人は多いでしょう。しかし、幸福のピークは「髪を切ったその日」であり、うれしい気持ちは翌日、さらに翌日と日を重ねるごとにどんどん薄れていくものです。
欲しいものが手に入れば、1週間幸せになれる
次の車はどうでしょう。ここでの車は「物質的な幸せ」の象徴として登場しており、この言葉の意味を考える上では必ずしも「車」である必要はありません。女性であれば、「ずっと欲しかった高級バッグ」などに置き換えてもよいでしょう。
特に男性にとっては、新しい車を手に入れることは大きな喜びとなることが多いでしょう。そして、その喜びはしばらくの間続くでしょう。しかし、時間が経つにつれて、新鮮さは薄れ、欲しかったものを手に入れたことに対する興奮や喜びは必ず減少していきます。
結婚の幸せは1ヶ月?
3つ目に示されるのが「結婚」です。結婚とは、自分にとっての新しい家族を作ることです。当然ながら人生の大きなイベントであり、特に結婚式や新婚生活の最初は特に幸せに満ちているものです。しかし、結婚後の現実や日常生活の課題が増えるにつれ、結婚がもたらす初期の幸福感は次第に変化していきます。
結婚の幸せの継続性については、100人いれば100通りあり、「1ヶ月」であるかどうかは意見が分かれそうなところです。
しかしここは、野原ひろし氏のキャラクターがなせるシニカルな表現であると考えれば、むしろしっくりきます。「結婚したこと」それ自体による幸せは1ヶ月続く、でもそれだけじゃないだろう、というわけです。
マイホームを持つ幸せ
マイホームを持つことは多くの人にとって夢の1つでしょう。しかし、ひろしはその幸福の“賞味期限”は1年であると言います。新しいところに住むことは、大変なわくわく感をもたらすものです、引っ越しから部屋の模様を整えていく過程、ときには片付ける過程ですら幸せに感じることもあるでしょう。
しかし、住むほどに、新しい住居に慣れ、街に慣れていきます。「慣れる」ということはそれが日常になる、当たり前になるということです。また、ローンの問題や維持管理の問題、また住居自体の不満などはしばらくして現れたりするもので、それを「1年」と表現しているというわけです。
すべてを手に入れた野原ひろしが語る「一生幸せでいたいなら……」
あらためて立ち止まって考えてみると、劇中での野原ひろしは、車もマイホームも持っており、もちろん結婚もしています。当然、定期的に散髪もしているでしょう。
つまり、これまで紹介した「幸せになれるもの」を、すでにすべて手に入れています。そんなひろしは、最後に「一生幸せでいたいなら、正直でいることだ」と語ります。
真の幸せは、物質的なものや一時的な出来事からではなく、自分自身や他人に対して正直であることから得られると述べているのです。反対に考えれば、「何も持たなくていい、ただ正直にいさえすれば、一生幸せでいられる」と言っているのです。
正直であることは、他者との信頼関係を築き、自分自身と他人に対して誠実である生活をもたらします。それは、自分自身の内面的な満足感と将来に渡る持続的な幸福感をもたらすことにつながります。幸せは自分の心が決めること。そうあるためには、まず正直でいることが大切である、ということなのです。
私なら、こう言い換えたい。
最後に蛇足です。実は私はこの言葉で気になっている箇所があります。それは1つめから4つめまでで使われている「だけ幸せでいたいなら」という言葉です。
考えてみてください。「1日だけ幸せでいたい」と考えたことはあるでしょうか?同じように「1週間だけ」「1ヶ月だけ」「1年だけ」幸せでいたいと考えたことはあるでしょうか?おそらく、ないでしょう。
「一生幸せでいたい」と考えることはあっても、期間限定で幸せになりたいと考える人はいないと思います。その点で、私は少し違和感を覚える言葉だと感じています。少しおこがましいですが、この言葉の意図を考慮し、同じ言葉を使った上で言い換えるとしたら、以下のようになると思います。
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床屋に行けば、一日幸せな気持ちになれるだろう。
車を買えば、一週間幸せな気持ちになれるだろう。
結婚をすれば、一ヶ月幸せな気持ちになれるだろう。
家を買えば、一年幸せな気持ちになれるだろう。
もし一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。
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今回は、『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしの名言「幸せでいたいなら……」を紹介しました。
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