「好きだけど幸せになれない」へのアドバイス〜幸せのカルテ07〜

好きだけど幸せになれない 「幸せになれない」カルテ

「好きなのに、なんでこんなに苦しいんだろう」――そう感じながら、今日もここにたどり着いてくれたのかもしれません。好きだけど幸せになれない、そのふたつの気持ちが同時に存在することの苦しさは、経験した人にしかわからないものがあります。

今回の幸せのカルテでは、そんな気持ちを抱えたひとりの女性の相談を通して、一緒に考えてみたいと思います。あなたの気持ちも、きっとどこかに重なるはずです。


今日の相談:「好きだけど、この恋で幸せになれる気がしないんです」

相談者:S.Wさん(仮名・32歳・会社員)

はじめまして。〇〇(※プライバシー保護のため、お名前は伏せさせていただきます)と申します。ずっと誰かに話したくて、でも誰にも話せなくて、気がついたらこちらに相談を書いていました。

2年前から、職場の先輩のことが好きです。先輩は42歳で、既婚者です。最初からダメな恋だといいうことはわかっています。でも気づいたときにはもう、好きになっていました。

先輩は優しくて、いつも私の話をちゃんと聞いてくれる人です。仕事で落ち込んでいるときに「大丈夫だよ」と言ってくれた一言が忘れられなくて。特別なことは何もないんです。でも、気づいたら毎日先輩のことを考えていて、先輩が近くにいると安心して、先輩がいないと不安で……。

先輩は私のことをどう思っているのか、正直わかりません。特別扱いされているような気もするし、ただの後輩として接しているだけのような気もする。聞けるはずもないし、聞いたところで何も変わらない。

一番苦しいのは、「この恋に未来はないとわかっている」ということです。先輩には奥さんがいる。私が幸せになれる選択肢が、どこにもない。でも好きという気持ちを消すことができません。消そうとすればするほど、そのことが頭の中で膨らんで、余計に大きくなるような感じがするのです。

最近は、「私ってこのまま一生、こういう報われない恋ばかりするんじゃないか」という気持ちまで出てきています。私って幸せになれないのかな、って思ってしまいます。

相談をしたところで答えが出ないとわかっています。なんとなく、親しい友人にも話すことができず、でも誰かに聞いてもらいたくてメッセージをお送りしました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

その苦しさこそが、「愛情の証」だということ


まず最初に、伝えさせてください。

あなたが感じている苦しさは、あなたがおかしいからでも、弱いからでも、ダメだからでもありません。「好き」という気持ちが本物だから、苦しいのです。

「最初からダメな恋だといいうことはわかっている」と書いてくれていました。それでも好きでいること、消えない気持ちに向き合っていること――それはとても誠実な姿だと、私には見えます。

「好き」と「幸せ」が一致しないことは、珍しいことではない

意外に思われるかもしれませんが、恋愛というものは、「好き」という感情と「幸せ」という状態が、必ずしもセットになるとは限りません。むしろ、「好きだけど幸せになれない」という状況は、思っている以上に多くの人が経験していることです。

好きという感情はコントロールできません。理性で「ダメだ」と思っていても、心はその人のそばに引き寄せられる。それは意志が弱いのではなく、人間の感情がそれだけ複雑にできているということです。

心理学者のヘレン・フィッシャーの研究によれば、恋愛感情はドーパミンやノルエピネフリンといった脳内物質と深く関わっており、一度「好き」という回路が形成されると、理性的な判断とは別のところで作動し続けることがわかっています。

つまり、「わかってるのに止められない」は、あなたの心が弱いのではなく、それだけ本物の感情が動いているということの、生物学的な証拠でもあるのです。

苦しい恋が続くのは、あなたが弱いからじゃない

「私って幸せになれないのかな」とも書いてくれていました。

実際に今は、そう感じているのだと思います。でも少し待ってください。それは今の苦しさが作り出している「感覚」であって、あなたの「事実」ではないかもしれません。人は苦しいときほど、過去のことも含めて「やっぱり自分はダメだ」という証拠として集めてしまいがちです。これは心理学で「確証バイアス」と呼ばれる、人間なら誰でも陥る思考の癖です。

あなたが弱いのではない。ただ今、とても苦しい場所に立っているだけです。


なぜ「好きなのに幸せになれない」が起きるのか


あなたの状況を聞きながら、いくつか気になることがありました。少し心理的な視点からお伝えしますね。「分析されているみたい」と感じたらごめんなさい。でもこれは、あなたを責めるためではなく、少し楽になるヒントとして受け取ってもらえたら嬉しいです。

幸せの条件を「相手」に置いてしまっている

「先輩がいると安心して、先輩がいないと不安」という言葉がありました。これは、あなたの幸せの感覚が、今、先輩という外側の存在に大きく依存している状態を表しています。

これ自体は、恋愛初期にはよくあることです。でも、この状態が長く続くと、「この人がいなければ幸せになれない」という感覚が強化されていき、相手がいるだけで幸せ、いないだけで不幸、という不安定な状態になってしまいます。

幸せの重心が自分の外にある限り、その幸せはいつも不安定です。相手の機嫌、相手の選択、相手の状況によって、自分の幸せが揺れ続けてしまいます。

過去の経験が「この人じゃないとダメ」をつくることがある

心理学には「愛着スタイル」という考え方があります。幼少期や過去の人間関係の中で形成された「人との距離の取り方のパターン」です。

特に「不安型愛着」と呼ばれるスタイルを持つ人は、相手から愛されているかどうかへの不安が強く、手の届かない相手や感情的に距離のある相手に惹かれやすい傾向があります。「ちゃんと愛してもらえないかもしれない」という緊張感が、逆に「この人じゃないとダメ」という強い執着として現れることがあるのです。

これは性格の問題ではありません。過去に「もっと愛してほしかった」という経験が積み重なってできた、心の反応パターンです。あなたの場合も、元彼との関係を振り返ったとき、何かそこにつながるものを感じるかもしれません。

「苦しい恋=本物の愛」という思い込みに気をつけて

もうひとつ、優しく伝えたいことがあります。

「苦しいほど、本気なんだ」「こんなに傷つくのは、それだけ好きだから」――この感覚、覚えがある方は多いかもしれません。でも、苦しさと愛の深さは、必ずしも比例しません

むしろ、穏やかで安心できる関係こそが、健全な愛の姿であることが多いのです。ドキドキや切なさを「本物の愛の証」として求め続けると、安定した関係を「物足りない」と感じてしまい、不安定な恋ばかりに惹かれてしまうこともあります。

これはあなたを責めているのではありません。それだけ「愛されたい」という気持ちが強いからこそ、そのパターンが生まれやすいのです。


それでも、あなたが今できること

「答えなんて出ないとわかっています」と仰っていましたが、私もここで「諦めるべき」「続けるべき」とは言えません。それを決められるのは、あなただけです。

でも、今のあなたに、少し試してみてほしいことがあります。

まず「自分がどうありたいか」を問い直してみる

「先輩とどうなりたいか」ではなく、「自分はどんな人生を送りたいか」を、少し考えてみてほしいのです。

先輩のことを好きな気持ちは本物です。でも今、あなたの思考は「先輩との関係がどうなるか」に大半を占められていませんか?自分自身の人生の主役が、知らないうちに「先輩」になってしまっていることがあります。

「5年後、10年後、私はどんな自分でいたいか」「どんな関係の中で、どんな毎日を送っていたいか」。先輩のことを一度横に置いて、自分自身に問いかけてみると、今見えていなかったものが少し見えてくるかもしれません。

「幸せのかたち」を自分の言葉で書いてみる

あなたにとっての幸せは、どんなものですか?「先輩と結ばれること」が幸せだと感じているかもしれません。でもその先に、どんな日常を望んでいますか?

「私にとって幸せとは、___な状態だ」という文章を、紙に書いてみてください。答えはすぐに出なくていいです。でも、この問いを自分の中に持つことで、「先輩との関係がうまくいくこと=幸せ」という図式が少し揺らぐかもしれません。

幸せの定義を外側(特定の誰か、特定の状況)に委ねている限り、幸せはいつも自分の手の届かないところにあります。幸せの主導権を、少しずつ自分の手元に取り戻していくことが、この先どんな選択をするにしても、大切なことだと思っています。

誰かに話すことで、見えてくるものがある

2年間、ひとりで抱えてきたんですね。それだけでも、本当に苦しかったと思います。

今回こうして言葉にしてくれたこと、それだけでもきっと少し変わるものがあるはずです。友人でも、信頼できる人でも、あるいはカウンセラーでも――誰かに「聞いてもらう」という経験は、自分の気持ちを整理するための大切な場になります。

話すことで、自分でも気づいていなかった本音が出てくることがあります。「やっぱり私は幸せになりたい」という気持ちも、「先輩のそばにいたい」という気持ちも、どちらも本物です。ただ、整理されていないだけかもしれません。


好きだけど幸せになれないあなたへ、最後に


最後に、ひとつだけ伝えさせてください。

今この瞬間、あなたが「好きだけど幸せになれない」と感じているのは、あなたが幸せになりたいと思っているからです。幸せになることを、まだ諦めていないからです。それはとても大切なことだと、私は思います。

この恋がこれからどうなるかは、わかりません。続くかもしれない、終わるかもしれない。それはあなたが決めることで、どちらの選択も、間違いではありません。

ただ、どんな選択をしたとしても、あなたには幸せになる権利があります。「この人がいないと幸せになれない」ではなく、「どんな状況でも、自分の幸せを見つけていける私でいる」という土台を、少しずつ育てていってほしいと思っています。

あなたの「好き」という気持ちは、本物です。その気持ちと同じくらい、あなた自身のことも、大切にしてあげてください

応援しています。

 

まとめ

好きだけど幸せになれない――その苦しさは、あなたが本気で誰かを想っている証です。今回はS.Wさんの相談を通して、苦しい恋の背景にある心理的なパターンと、自分を取り戻すためのヒントをお伝えしました。

幸せの条件を相手という外側に置いてしまうこと、過去の経験から育った愛着のパターン、苦しさを本物の愛と混同してしまうこと――これらはどれも、自分が弱いからではなく、真剣に誰かを想ってきたからこそ生まれやすいものです。

大切なのは、「この人との関係がどうなるか」ではなく、「自分はどんな人生を、どんな自分でいたいか」を問い直すことかもしれません。どんな選択をしたとしても、あなたには幸せになる力が備わっています。その力を信じて、どうか自分自身を後回しにしないでいてください。

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